K5(けーご)の競輪、自転車談義

人生はそろそろ打鐘周回へ…

第39回共同通信社杯【G2】

開催中、青森の気温は25度前後という秋の訪れを知らせるかのような日々だった。9月18日の敬老の日に決勝が行われた”若手の登竜門”共同通信社杯が行われた。

深谷知広の約9年ぶりとなる特別記念制覇で幕を閉じた。

若手の台頭があり楽しみが面白く増えた一方で様々な危機も感じる開催となりました。

 

自動番組による明暗

共同通信社杯の特徴として自動による番組編成を行なっている。反面、普段追い込みとしてやっているベテランは番組が気が気では無いだろう。しかし、この開催の狙いはそこにある。表向きは若手の登竜門なんて言っているが、普段自力の若手を目標に走っているベテランが目標選手のありがたみを思いしる、または目標を失い予選落ちし自らの実力を思い知る、いわば引導を渡されるような実は残酷な開催かもしれない。

明暗が分かれたベテラン

初日にいきなり洗礼を浴びたベテランがいる。佐藤慎太郎と平原だ。

2人ともラインの先頭で自力となってしまう。ここで明暗が分かれてしまった。まず平原は打鐘から先行し後ろにつく2人の勝ち上がりを狙ったか?自らの逃げ切りも視野に入っていたのかはわからないが、バックで佐々木豪に捲られ神山の援護も虚しく、最後は失速し8着と大敗。ラインとしても神山しか勝ち上がる事が出来ず予選落ち。翌日は腰痛の為、欠場となる。

郡司も一次予選敗退。渡辺雄太の追走すら怪しげに見えた。不調…いや不協なのか?結果としてそう映った可能性は否めないが、開催中、郡司を含む南関としての神奈川勢に疑問を感じる開催となった。同地区の深谷がめでたく優勝したのに祝福の際に郡司を含む神奈川勢が1人もいなかった。これまで深谷は郡司いや神奈川勢のために走ってきたように見えたが一体どういうことなのだろう。何か事情があったのかもしれないがとても違和感を感じた。今後、南関として連携や渡辺などの若手に影響がなければ良いと願うばかりだ。その後、石井毅や根田空史のXで新幹線とタクシーの予約時間が早かったとのポストがありました。青森競輪場はタクシーが相当少ないとの情報もありました。

 

x.com

 

さて、一方で佐藤慎太郎は前日8時間”しか”眠れなかった…らしく自力としてどう戦うかを考えていたという。後ろに2人ついている。というのは佐藤慎太郎ですら、やはりプレッシャーがあったそうだ。
それでも位置どり名手でもある佐藤は内をすくい2着、番手の和田圭も3着に入る動きを見せた。

佐藤慎太郎のように普段から他地区との連携実績があるような選手は自動番組でも有利に進められるのは間違いない。二次予選では同地区守澤とは同番組だったが目標選手不在ということで別線選択だった。後談では守澤から別線を申し出たということ。それでも中四国の三番手につかせてもらえるのは佐藤慎太郎としての普段のレーススタイルや番手選手としての積み重ねであることに違いないだろう。

 

新時代の幕開け

多くのS級S班の敗退

新田は落車の影響もあるのか、動き悪く二次予選敗退。守澤も同様。古性は準決勝進出が決まっていながら家事都合とやむなく欠場となり、決勝にはSS新山1人という状況に。様々な要因あり、開催の思惑通り?なのか。SSの敗退と欠場が多く。良くも悪くも新時代の到来を告げる開催となった。

売上減少

影響は意外なところにも。前年は名古屋で行われ74億を売り上げを記録していたので、今年は目標を80億としていたが、結果は69億と目標には遠く及ばなかった。

やはり売上あっての競輪なので、いくら若手が出てこようと売上がなくなれば衰退の一途をたどることになってしまう。これは競輪ファンとしても無視できない問題であるだろう。SS欠場は要因のひとつではあるものの、昨今の物価高や円安は少なからず影響している。生活がままならないのに競輪なんてやってられるかという意見は全くその通りで反論はない。しかし競輪を面白いものにしていくのは選手や主催だけの問題ではない、我々ファンもできることはあるだろう。一丸となって競輪を盛り上げたいところだ。

若手の台頭

さて話を戻すと、注目の107期以降の若手の準決勝進出者を見てみると以下の通り。

嘉永 113期 25歳

佐々木豪 109期 27歳

犬伏 119期 28歳

新山 107期 29歳

阿部拓真 107期 32歳

北井 119期 33歳

隅田 107期 36歳

北井と隅田は107期とはいえ若手と呼ぶにはもう遅いかもしれない。最年少の嘉永と11歳も離れている。やはりここでは30歳以下を若手と呼ぶのがふさわしいかもしれない。

 

ラインの重み、力の差

二次予選まで自動で組まれていた番組は純粋な脚力と正直、運の要素もあるだろう。しかし、なぜか準決勝から主催者による番組編成になる。すると途端にラインでの力の差が出るように感じる。

二次予選まで自動番組で組まれていた番組は純粋な脚力と正直、運の要素もあるだろう。準決勝から主催者による番組編成だと急にラインでの力の差が出るように感じる。やはり競輪はライン戦であり、個の力よりラインの絆。ラインの強さが競輪を熱く、おもろくさせているのだと実感した。

直前の関東の競輪と、この共同通信社杯の自動番組が競輪とは何か?を教えてくれた。

大会前に中野浩一氏が後関氏がオールスターと立川記念での関東の戦法に苦言を呈していたのもわかる。確かにチームスプリントではないし、出場者全員が1着を目指すのが大前提というのもわかる、他の自転車競技はチームの中からエース1人が勝利を取りに行くことが多いのに対し、競輪は全員が1着を目指しているからこそ競輪が面白いのは間違いない。それにタイトルを地区で順番に取り、渡し合うものでもない。

くり返しになるが、やはり競輪にはラインがあってこそおもしろいのだろう。ラインがある上で全員が1着を目指すからおもしろいのだ。もちろん戦法としては否定するつもりもない、競輪の勝ち上がりという難しいシステムの中でメイチ駆けができるというのも一つ、実力や絆があってこそだと思った。地区やラインに戦法の癖や競輪観や特色があるのも応援するファンを増やすきっかけにもなるだろう。中野氏や後関氏のように自分は関東のような競輪が好きではない。と思えば違う思想を持った他地区、ラインを応援すれば良いのだから。

決勝の9人を見てみると新山の上にいる7位の清水裕友は7782万円。新山はSSとして迎えた地元ビックでもちろん優勝を狙う。優勝すると賞金争いも6位の脇本も抜かし浮上。グランプリとSSを安全圏に呼び込める。新山が優勝するとグランプリ当確ラインとしては1つ危うくなる清水。G1を二つ残しているとはいえ深谷、三谷も優勝すれば可能性が非常に高くなる。つまりSSも若手も中堅もベテランもみんな優勝したいということだ。大会前のざわつきを払拭するメンバー構成、決勝は”全員が1着を狙っていた”だろう。

ところが、これが批判の的になってしまった…中四国が並んだことで先頭の佐々木にメイチ駆けを期待する人々があまりにも多く、佐々木の走りに批判が集中してしまいレース後にXのトレンドに上がってしまうほどであった。

佐々木は特にメイチ駆けを匂わすコメントはしてないと思ったし、今節はご覧の通りの出来、8月から立川、岸和田、京王閣と戦績を見てきて非常に良い走りをしていたので、メイチ?もったいないな、勝ちに行っても良いのでは?とは思っていた。本人も初の特別競輪決勝進出で勝ちたいと思うのはごく自然なことだと思う。
まだまだ27歳、いろいろな試練をくぐり抜けさらに強くなっていってほしい。中野氏にはレース後の振り返りとして、佐々木の走りを称えてほしい。

 

今節、単騎で勝ち上がってきた若手107期以降の若手が2人、嘉永と佐々木に加え107期SS新山、この3人で確定板独占なんてことがあれば、競輪ファンにとってこんな良いことはない。と思っていた。

ところが決勝では皮肉にも若手の単騎勢2人はラインの援護がないということが大きく影響した。1番人気を背負った嘉永深谷に捌かれ後退、新山のカマシは単騎としてはあのタイミングしかないだろう、番手捲りを打った深谷の相手にはならないほど差がついて優勝を逃した。後ろに北日本の名番手陣の誰かがいたら?と考えてしまう。純粋な脚力だけでは勝ち上がることはできても、優勝できないのが競輪なのかもしれない。日頃から自力で風を受けている2人は今開催、他の若手よりも後ろにいるベテランのありがたみも思い知らされたかもしれない。

 

おわりに 今後を担う若手

今回、決勝にのった3人は新S級S班2人と共に今後の競輪界を担っていかなくてはならない存在でしょう。地区によるものなのかもしれないが、違う競輪観を持つ者が同じ世代で次世代の競輪で争う世界線も悪くない。

競輪界にはたくさんの課題はあれど、ニューヒーロー誕生はどの世界にも発展していく過程には必ず必要であり、今大会はそんな未来の明るさをほんの少し見せてくれる大会になりました。


いつか赤パンを履いた3人…いや5人?6人?がどこかで激突するのを今から楽しみだ。奇しくも全員他地区だ。

 

youtu.be