SS 5人斡旋の超激戦記念を制したのはSSの中でもずば抜けている古性優作であった。
強い…強すぎる。
昨年にG1を3つ獲ったこの男にスランプや不調の言葉はないのだろうか。このまま本当に期待に応えるのではなく、私たちの期待を超えていくのだろうか。この男を中心に最強近畿、近畿無双となるのだろうか。
古性、脇本、深谷、新山、佐藤慎太郎のSS5人に加え、今をときめく北井や犬伏など超豪華メンバーが揃った。
さらには犬伏が初日特選を外れるほどのメンバー構成となった。
初日特選
サプライズは近畿の2人の並びが逆であったことだ。
古性の番手に脇本がついた。今までもこういった並びはあったが脇本や古性のインタビューを見ていると今年は脇本のレーススタイルの転換に本気で取り組んでいるように見える。すぐに結果が出るような簡単なことではないし、今まで勝利を量産してきたスタイルを変えるということはとても勇気のいることである。こういった新しい取り組みする選手は応援したくなるものである。位置にこだわる脇本、牽制やブロックをする脇本。楽しみである。そして何より古性の存在は大きいだろう。
レースは…
北井の独壇場だった。北井の独壇場は7車や9車の三分戦で見ることはあっても9車の細切れではできないと思っていた。
先日いわき平記念でも北日本が(新山のつっぱり先行一辺倒の)戦略転換を匂わすコメントをしていたばかりだった。
2つ以上のラインがサラ脚で飛んでくると厳しいと…
ところが北井は嘉永をつっぱり、新山をつっぱり、なんと古性までつっぱってしまった。
番手の深谷の動きがあったのはもちろんだがそれにしてもSS2人をつっぱり返し、さらには番手の深谷も押し切るのではないかと思わせるほどの脚で2着。
強い…強すぎるぞ。北井。
初日を終えた段階で決勝も北井–深谷を崩すのは難しいのでは?と誰もが思ったのではないだろうか。
近畿の2人も、北日本の2人も、地元優勝者出したい番組屋も思ったであろう。
番組屋の露骨な番組編成
初日特選のレース結果を受けてなのか、番組編成が露骨であった。
いや、記念というのは斡旋から番組編成まで地元優遇があるのは普通ではあるのだが、二次予選では久田–松本–渡部ライン、犬伏–佐々木豪ラインはまだわかるが、なんと他地区である古性の後ろに橋本強を含む地元地区3人を付けたのだ。準決勝でも北井の後ろに松本、橋本、古性の後ろに渡部をつけた…
これは流石に番組屋に品がないな。とも思ったのだが番組屋はあくまで番組編成をするだけで、並びは当人同士で決めるわけで並びたくなければ並ばなければ良い。それでも古性や北井が前を回ったということは、古性や北井にもメリットがあったということである。
そしてこの番組編成が諸刃の剣であるのは今回の結果からもわかる通り、古性や北井も共に決勝に上がる可能性が上がり、決勝では別線となる可能性も高いことからである。
番組を見ると渡部、松本、佐々木、橋本の誰かを優勝してもらいたい。その馬に犬伏。というあまりにもわかりやすい番組であった。
それもSS5人+北井がそれほど大きな壁なのかもしれないが、地元選手の実力が軽視されているようにも映りかねないし、明らかな優遇番組で万が一負けるようなことがあってもそれはダメージは大きい。
地元を応援する側としては、もちろん勝ってはほしいが、絶対に負けてほしくない。というわけでもなく、勝負に挑み負けた場合、それはレースとしては価値があると思うし、勝利だけを求めているわけでもないと思うのである。そう、先日の玉野記念の取鳥雄吾のように。
太田龍希の作戦に番組屋屈す
不安は的中。犬伏、佐々木が揃って二次予選で敗退した。
地元愛媛から優勝者を出すためには犬伏の存在は欠かせなかったはずだ。
番組屋どころか、愛媛勢も思っていたのではないだろうか。ここに太田龍希が待ったをかけた。もちろん別線としては犬伏を勝ち上がらせたくないわけだがそう簡単に敗退させる相手ではない。そこで太田龍希がとった作戦は”フタ”である。
脚力差がある相手には有効であるが、脚力差があるので下げられて後ろから捲られることや外併走になるので自分が消耗してしまうパターンが多い。
太田は3車ライン、犬伏は地元佐々木豪を後ろにつけてた為、4番手から7番手に後退するのはリスクが大きいと思ったか。なんと最終コーナーに差し掛かってもフタされたまま何も出来ず犬伏どころか、佐々木豪まで敗退に追い込んだ。
それでもSS3名が敗退
準決勝1本目は脇本vs深谷
ここの番組には地元勢はなし。つまり脇本か深谷をここで争わせ、どちらかが敗退すれば。という思惑か。
深谷の強烈なかかりに脇本の追い上げ届かず、敗退。12Rで古性の後ろに渡部がついていることから決勝を考えると脇本敗退は地元勢とっては願ってもない展開である。
いや…狙い通りか?
2本目は新山vs北井という構図になった。
北井の後ろに地元の松本と橋本が付けることから、SS2人とはいえ調子の良くない2人であることからここは一気に2人を敗退に追い込もうという思惑通り、ラインでワンツースリーが決まった。
最終は古性の捲りについていった渡部だが、和田真久留のかかりもよく芦澤にも絡まれ3着までには入れなかった…
決勝
番組屋の戦略?もあり、決勝へと駒を進めた愛媛の松本と橋本。
決勝では古性とは別線、これは番組屋としては想定外なのか、想定内なのか…
いずれにせよ古性–和田圭ライン、深谷–和田健太郎ライン、北井率いる神奈川3車ラインは地元勢として明らかは厳しい。
レースは北井率いる3車ラインが優勢と見られたが、古性が技アリといったような捌きで北井の番手を和田真久留から奪う。松本は古性が番手を奪ったと見るやポジションを上げ、捲る。悪くないスピードであったが、北井のスピードをもらった古性まで捲るのは至難である、そして北井も別線のSSが番手に入れば押し切るのは難しい。深谷、和田健太郎もなす術なくといったところか。
今節も決して調子が良かったとはいえないだろう。昨年のGPからここまで古性にしてはらしくない走りは続いていた、その状態であっても知恵を絞り、やれる術で、勝利を貪欲に求めていく。そこに卓越した技術やセンスが重なっているだろう。
まさにSSだ。
一方で、皮肉にも地元番組でありながら犬伏、佐々木、渡部は優勝どころか決勝にも上がることはできなかった。
この結果に観衆はどういう印象を持ったのだろうか?
ラインを組むと個がもつ実力以上の力が出るのも確かだが、レースをコントロールする自力がなければ、ラインごと負けることもあるし、最終局面ではポジショニング、脚力(差し脚)がなければラインの力を持ってまでしても勝つことはできない。
競輪の複雑な要素が垣間見えた開催であった。