K5(けーご)の競輪、自転車談義

人生はそろそろ打鐘周回へ…

漢・取鳥雄吾 玉野記念【G3】瀬戸の王子杯争奪戦

個人的に中国地区には期待している将来有望な若手がたくさんいるのである。

若手をどう定義づけるかにもよるが、一般的にも20代を若手とするのであれば中国地区には多い。

清水裕友を筆頭に、太田海也、取鳥雄吾、晝田宗一郎だ。

今回の玉野記念では地元の取鳥雄吾に優勝の期待がかかったが、惜しくも優勝はできなかったが、優勝に匹敵する魂の走りを見ることができた。

中国別線

中国地区4人が揃った初日特選では、先日の近畿のように中国地区は別線を選択した。

先日の奈良記念、近畿の地区としての強さ、影響力は他地区にもあったのか?

清水はインタビューで中国地区でもそういう取り組みをしていきたいとのコメントもあった。

確かに、4車以上並べば、別線に対しプレッシャーもかけられ、長いラインは脅威である。しかし全員が勝負に絡める。という点においては初日特選では良いのかもしれない。

初日特選

取鳥は前受けするも一度下げ、打鐘から先行勝負にでる。

SS眞杉相手に先行勝負に挑む。眞杉も突っ張る。まさに先行としてのプライドのぶつかり合いだった。取鳥は外を回され苦しい展開、最終バックまで食らいつくも力尽きた。9着であった。

 

これには驚いた。特選メンバーで先行しそうなのは取鳥と眞杉くらいしかいない。そこに6番車である取鳥がSS眞杉を前に出させてから先行勝負に出るという。昨年G1を二つも制しているSS相手に真っ向勝負を挑んだのである。

取鳥は叩けず、着に絡むような勝負には絡むことができず終わってしまったが、初日特選ならではの勝負に心動かされた人もいるのではないだろうか。取鳥のこの勝ち負けではなく、力勝負を挑む気持ちは必ずや取鳥という男を大きく、そして強くさせるだろう。

初日特選は勝敗とは別の勝負が見れる?

この勝敗を度外視した力と力の勝負は初日特選という特性からうまれるものだが、博打という観点からすると批判も多くなるのは自然である。

初日特選とはいえ賭けている人がいる以上は勝負に徹しろ。それがプロだろ。という人も少なくない。

競輪にはこういう勝敗の他にも勝負があることを忘れてはならない。だからこそおもしろい。こういった勝負があるからこそ今後のレースにも影響してくるのだ。

さらにいえば取鳥という熱い男を知っているとこういう勝負をするんじゃないか?という予想もできなくはないのだ。

初日特選のメンバーは決勝に上がる可能性も高いので大事な決勝でのレースを意識したレースや、初日に行われることから互いの状態を見極めという確認として行われるレースでもある。

 

玉野競輪令和6年能登半島地震復興支援競輪開設73周年記念瀬戸の王子杯争奪戦G310RS級準決勝

 

準決勝 眞杉に完敗…中国地区の一角を

二次予選では取鳥の前を回った晝田は取鳥と共に準決勝に上がる。という強い思いの先行は素晴らしく、取鳥は1着、晝田自身も3着に残った。

準決勝では清水の前を回るが、眞杉のテクニカルな先行にやられてしまった。

関東勢としては清水、晝田の2人を決勝に上げてしまうと勝ち目はかなり薄くなる。清水が番手に回っていることから眞杉は晝田潰しに成功すれば清水まで敗退に追い込めるのでは?と思ったか、打鐘で晝田–清水ラインに蓋をしてから駆け、晝田の先行のタイミングを潰すというテクニックを見せた。これが非常にうまく決まり、晝田、清水共に敗退となった。

蓋は併走することから脚を消耗するので誰もができることでなく、眞杉だからこそできるテクニックでもある。眞杉は2着だったが、それでも晝田どころか清水まで敗退に追い込んだのだから、決勝まで見据えたこの走りはまさしくSSであり、非常に素晴らしいクレバーな走りであった。

同地区<同県? 

決勝で中国は3車揃うも、他は他地区同士で3車並び、3対3対3の3分戦となった。

中国は取鳥、松浦、岩津の3人、地元記念の決勝ということもあり

取鳥–岩津–松浦?

松浦−鳥取–岩津?

はたまた松浦別線か?なんて憶測が飛んだが、発表された並びは

取鳥–松浦–岩津

これには賛否あった。

同地区であっても同県(岡山)に挟まれる他県(広島)はちょっと違うもではないか?前か3番手で走るべき。など。

確かにラインを構成する際、同地区であっても同県が並び、他県は前か後ろという傾向はよく見られる。が、これによくこだわっているという印象を受けるのも中国地区である。良くも悪くも北日本なんかは揉めている印象はない。

個人的にはこの並びでよかったと思う。並びというのは地区で決めるのではなく、脚質に伴ってそれぞれが(地区として)1番力を発揮できる場所で走るべきだからだ。

 

取鳥が選択したのは自力先頭。取鳥という漢らしさも際立った。

 

正直、直近の松浦の脚力を鑑みても自力は厳しい。松浦がメイチで駆けるより番手で援護した方が取鳥が優勝できる可能性は高いとみた。

 

3番手岩津も文句なしだろう。

某解説者は3番手を走らせたら右に出るものはいないんじゃないか?と言わしめるほどの3番手のスペシャリストである。

 

つまり、この並びは取鳥が優勝するにも、中国地区から優勝者を出すにも最適な並びであった。

漢 取鳥雄吾

中国地区は中団からのレースとなった。

山口拳矢が眞杉を叩いた直後、打鐘前から取鳥は勝負にでた。

初日特選とは立場を変えて眞杉と真っ向勝負、取鳥は決勝でこの形を想定していたかのような初日特選での勝負。これには眞杉は受けて立つしかないだろう。

番手の平原が追走できないほどの眞杉のスピードでも叩くことができなかった。

 

地元記念をどんな形でも良いから優勝したい。自分の競争スタイルで優勝するために、初日特選をうまく利用するなど、シリーズを通して自分で優勝を呼び込むような競争をしていた。まさに強い漢、取鳥雄吾だった。

 

眞杉との勝負には勝つことができたものの、バックまででもう脚は残っていなかった。番手松浦すかさず発進。

中国勢の後ろ4番手に位置していた山口拳矢にとっては絶好の展開。山口もこの展開を読んで4番手に位置していたのだろう。読み通りといったところか。

眞杉との先行争いに勝った取鳥のスピード、そのスピードをもらって間髪入れずに発進した松浦のスピード、後ろにいる山口を警戒しつつ内を締める岩津。

ここまで完璧とも言える布陣を捲れるほどの脚は山口にもなかった…

中国勢ワンツーで玉野記念を締め括った。

取鳥は自分の得意とする先頭で、他のSS自力ライン2つの仕掛けを許さない、魂の走りを見せ、ラインから優勝者を出した。この走りは優勝に匹敵する素晴らしい走りであった。

 

玉野競輪令和6年能登半島地震復興支援競輪開設73周年記念瀬戸の王子杯争奪戦G312RS級準決勝

松浦の番手まくりは非情だったのか?

眞杉をつっぱった取鳥を見捨てたようにも見えたことから、非情と評された松浦の番手まくりは果たして本当に非情だったのか?

あれだけの距離をあれだけのスピードで駆けた取鳥を1番近くで見ていたのは紛れもなく松浦だ。松浦がここで少しでも取鳥への情けをかけていようものなら、岩津ともども中国勢は山口拳矢に喰われていただろう…

さらに地元に挟まれた松浦としては岩津のチャンスも考えるとするのであればあのタイミングは間違っていないだろう。地元に挟まれた責任感からできる最大限の走りだったと言えるだろう。

それぞれの得意を活かし、役割として一致した場合にラインは機能し、途轍もない力を発揮する。競輪の醍醐味の一幕が観れた開催となった。

 

繰り返しになるが、地元記念優勝と同じくらい価値のある走りを見せた取鳥。次は必ずや結果もついてくるだろう。

 

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