昨年の奈良記念をなぜか鮮明に覚えている。
強烈な捲りに加えて、外からさらに捲ってきたSS新田を捌く強さも見せていた。勝利やや地元記念への気持ちが溢れでていたレースだったからかもしれない。そしてあの三谷竜生のもがいた時に見せるあの独特の乗車フォームだからこそ、さらにそう見えるのかもしれない…
近畿勢は7人が決勝進出を決め、自力が3人いるということでそれぞれ別線を選択。竜生の後ろを回るのは兄 将太だ。三谷竜生は去年以上に気持ちの入った熱い走りを見せ
6年ぶり兄弟ワンツー、そして奈良記念連覇も決めた。
優勝インタビューでは兄将太も登場し、2着の選手もインタビューされるという異例のインタビューも始まったのだ。
将太は「自分が優勝したわけではないが、めちゃくちゃ嬉しいです!」との言葉の通り、感極まって涙するほどだった。こんな温かい素晴らしい2着のインタビューがあるのだろうか?
世界中を探しても日本の競輪だけではないだろうか…
選手がチームではなく地域(地元)に所属するということで兄弟の絆、ラインという存在、そして地元で開催のされる記念レースに対する想い。兄弟ワンツーなど様々な条件が重なって生まれた異例なインタビューではあるものの。
これは競輪特有であり、ある種、閉鎖的な部分があるのも否めないが、こういったシーンを見ると競輪というのはギャンブルやスポーツにとどまらずドラマがあるなぁ。としみじみ思うのである。
まさに”ドラマティックスポーツ競輪”である。
近畿勢の選択
決勝に近畿のから7人という状況に近畿勢の選手層の厚さは言うまでもないが、例年、奈良競輪は番組編成がとても上手い印象がある。他の番組屋に比べ、特定の選手を露骨に優遇したりはせず(そう見えるだけかもしれないが)上手く多くの地元勢を勝ち上がらせている印象だ。
そして近畿勢の特徴として同レースに5人以上の場合は分かれるという選択をするということころだ。初日特選でも5人は分かれて戦った。
これもその地区の狙いがあるので一概にどっちが良い、悪いという話ではないが。
別線選択のコメントを見ると5番手にはチャンスが少ないから分かれる。みんなにチャンスがある方が良いといったコメントが見られる、これが近畿の強さの一つの要因でもある。
この状況の時こそ、あの川崎記念の時の郡司のコメントだろう。
「まとまるだけが結束力というわけでもない。」でなないだろうか?
アップデートされ続けている。まさに近畿勢 2.0
近畿は村上義弘が築いた。とよく言われる。築いたことは言うまでもなく素晴らしいことだが、辞めたりいなくなったりした途端に築いたものが無くなったり、徐々に失ってしまうなんてケースはどの世界にもよくあることだ。
しかし今の近畿勢にはしっかり受け継がれている。いやそれどころか、さらなる進化を遂げていて強靭なものになりつつあるようにも見える。
地区の結束力だけでいうのであれば他地区に比べ、頭ひとつ抜けている感じはある。
近畿
北日本 静岡
中国 四国
関東 南関 中部
九州
※あくまでもイメージで、独断と偏見である為、異論は様々あるだろう。
近畿同士の決戦
そんな近畿が分かれて激突した初日特選と決勝
初日特選
脇本–三谷竜生
古性–南–東口
新山の前受け、中団4番手には古性、最後方8番手に脇本。脇本と新山が先行争いでやりあえばもちろん古性ラインに勝機。新山のつっぱりを警戒し、誰も動こうせず、新山は途中波を作ったりと後方の脇本を牽制。
打鐘までレースは動かなかった。打鐘と共に脇本が仕掛ける。1周以上(奈良は33バンクなのでおよそ400mほどか)脇本は外踏み続け、最終4コーナーで新山を捉え1着。かつてのスピードこそなかったものの航続距離が異常に長く叩き勝ちきった。
しかし不自然さが残った。そう、いつもののような脇本のスピードではないのに古性–南–東口というブロックのスペシャリストでもあろう3人が横を通過する脇本を誰1人止めなかったことだ。
別線とはいえ、やはり同地区の選手に対してブロックはしずらいものなのだろうか?
いやいや、地元地区の記念でのリスクを考慮したまでか…初日特選だからなのだろうか?
いずれにせよ、様々な憶測を呼んだ…
決勝
迎えた決勝は初日特選を大幅に上回る7車、そして近畿ラインは3分することに決定。
脇本−東口
古性−南–松岡
三谷竜−三谷将
絶対的な先行がいないことと、初日特選のスルーもあり古性ラインの評価はそこまで高くなく、脇本の復調連勝も相まって1番人気になったのは脇本であった。
果たして、古性(–南)は脇本に対してどういう動くのか注目が集まった。
実際レースが始まると、古性が前受け、脇本が最後方から誰も動かず…
残り2周を切ったあたりで脇本が動いた。
古性は以前より脇本と連携、今後もたくさん連携するだろう。重要な局面もあるだろう。古性の口からは脇本さんが…の言葉も多く耳にする。脇本に対して愛を感じる。年上ということも少なからずあるだろう。
そんな古性が別線脇本との戦い方は先行することが1番わだかまりが生まれる事なく、後ろの南にもチャンスがある戦い方だったのではないだろうか。
事実、脇本を出させなかった。代償としてゴール線までは持たなかった…
古性のつっぱりの巧さ
縦脚あり、ヨコもできる、自力良し、番手良し、単騎でも良し、のまさにオールラウンダー古性はつっぱり先行でも技術が光った。
通常つっぱりたい場合、誘導退避(残り2周のライン)の手前から誘導との車間をあける。これは誘導員早期追い抜き防止もあるが、誘導退避の瞬間にトップスピードに持っていくための車間でもある。
これにはデメリットがあり、車間をあけるため早くから風を受けることとなり、脚力が消耗するのである。
後ろから上昇がなかった場合、2周以上風を受ける必要がある。後ろが来ないからといって誘導に追いつことすれば誘導はレース開始と判断して退避してしまうためもう風避けの恩恵は受けられないのだ。
古性は後ろが来ていないと見るや(脇本だったのでこないと読んだか)誘導との車間を切らずに風避けとしての残り2周を切っても誘導を使うことに成功したのだ。それも33バンクで。
南のブロック
33バンクで残り2周を切っても誘導が退避せず、古性が先頭という状況に痺れを切らして仕掛けた脇本に対して、南が強烈ブロックを見せた。
初日特選では何もしなかったが、やはり決勝では見せてくれた。脇本との先行争いを受けて立ち、突っ張った古性に対するものもあったのだろう。
単なる牽制ではなく脇本のあのスピードを完全に殺したブロックであった。この先行争いは2人の”巧さ”により大阪ラインに完全に軍配が上がった。
狙いすまして仕掛け、最後は力で押し切る
同地区2ラインの先行争いを見届けここぞというタイミングで仕掛けた北日本それに続いた奈良の兄弟ライン。
奈良の2人の仕掛けが一歩遅れたか?と思いきやすかさず竜生が守澤の位置を奪うことに成功。
最後は外を回されるものの、菅田の牽制も受けるが脚力で違いを見せた。
近畿無双
勝ち負け以上にそれぞれの特徴を活かし、役割を果たすという強い気持ちが表れていたレース。ラインから勝者を出す。近畿から勝者を。という目的に猪突猛進しているように映ったなら記念であった。
この最強近畿に待ったをかける地区はどこだろうか。
選手層の厚さバランス的には中四国だろうか、南関も選手自体の組み合わせでは対抗できるような気もする。
脇本(寺崎)−古性–南
太田–清水裕友–松浦
といったところだろうか…
対 近畿が2024の見どころかもしれない。