グランプリ直前の記念はつらい…
主催や選手など関係者から聞こえてきそうなほど、この時期は大変である。なぜならグランプリが決まっているS級は出走しないし、お客さんはグランプリに資金を温存する傾向もあり、本場は寒さも相まって客足は遠のく一方なのである。
それでも選手達は熱い走りを見せてくれていたおかげか、売上は昨年を大幅に上回る54億円であった。※昨年は48億円
寛仁親王牌決勝?
今節には犬伏湧也、和田健太郎、渡部幸訓、南修二、小松崎大地と寛仁親王牌の決勝メンバーが5人も揃った。初日特選は小松崎が外れたものの、競輪祭決勝2着の松井宏佑が入り見応えのあるレースであった。
犬伏のつっぱり先行に松井が勝負挑み、やり合ったところを山田久徳がしっかり捲り近畿ライン上位独占で決着。
犬伏スランプ突入??
競輪祭の開幕レース1番車に指名されるも。結果はご存知の通り振るわず。負け戦も特に見どころなく競輪祭を終えて、迎えた今節、初日特選も1番車に指名され、前受けつっぱり先行するも最後まで持たず失速し9着…その後、急性上気道炎のよる欠場が発表された。
犬伏の前受けつっぱり先行はいつもゴールまで持たない。あの強い犬伏にそんなはずは…とも思うが強い弱いの話ではなく脚質の適正ではないだろうか。
犬伏にはカマシ一発タイプの脚で、瞬間の最大出力がとてつもない力で400〜500m程度の航続距離なのである(数々の大物達を千切ってきた実績がある。S班でもついていけないほどである)
そこそこ高い出力で長い時間、800〜1000m踏み続けるのは苦手なのかもしれない。前受けつっぱり先行が得意な新山との比較をすると明らかな違いがある。
共同通信社杯準決勝、防府記念決勝、競輪祭初日と見てみるといずれも同じような結果である。本人が長い時間踏み続けられるようなテーマや改善狙って取り組んでいるのかは謎だが、そこまで心配はいらないとみる。赤板ではなく打鐘、または最終ホームからいけば犬伏の勝ちパターンである。
絶好調九州ライン、伊藤と林の相性抜群
今節合計3回の連携となった伊藤旭と林慶次郎。
2次予選では林のカマシに伊藤が渡部のブロックを受けるも、別線の追従を許さない脚を見せつけ最後は林をも交わした。
準決勝では内に包まれ、林との連携を外しながらも外を回り1着にくるなど、競輪祭で単騎で脇本に飛びつきついていった脚は健在、好調さもキープしていた。林も直線で中を割り2着に入った。連携外しながらもワンツーで決まった。
決勝では、松井のつっぱりに果敢に林が挑むが叩けず、叩けずと見るやいなや、すかさず南関勢の3番手を取りになんと和田健太郎に絡んだのだ。結果、南関3番手は取れず後退となったが、林慶次郎の果敢な攻めと伊藤旭の気持ちの強さは連日とても良いレースを見してくれた。
2人の縦脚は文句ないだろう。実力十分。そして林は臆することなく先行する姿をよくみかけ、伊藤の気持ちの強さは番手を任してもしっかりこなしてくれそうな動きであった。2人のコンビはとても良いコンビに見えた。九州を引っ張っていける力はあるだろう。
南関勢圧巻、松井魂の先行
決勝では南関勢が4車並ぶという番組になった。神奈川3車だったので和田健太郎が4番手と思いきや、五十嵐が3番手を譲った。小田原記念では深谷を4番手にしなかったりと
こういったところに南関勢の関係性の良さが伺える。防府記念ではS班の松浦が4番手に入回ったが、いずれも状況が違うので、どちらがとかではなくどちらも素晴らしい。
松井は前受けからなんと2周半つっぱり先行見せた。関東ラインが誘導を切り、叩きにきたところつっぱり、九州勢がすかさず来たところもつっぱり、全てつっぱって出させる気はなかったという魂の先行。さらに2着にも入った素晴らしいレース内容であった。レース後のインタビューでは「深谷さん欠場した分、頑張ろうと。自分も南関を引っ張っていけるように」とコメントした。
個人的には既に十分南関を牽引しているし、有力どころが欠場した今回に関して言えば松井自身が番手を主張したり、勝ちにいっても良かったのでは?とも思う。競輪祭を見ても思うことは、勝てる時に勝っておくことが松井に必要なことかもしれない。
優勝は和田健太郎、昨年は野原雅也
中割り、間を抜けてくる。
和田健太郎の代名詞と言っても良いだろう、この日も3番手から松井と佐々木と間を抜け見事1着。優勝となった。
12月の伊東温泉記念。昨年の優勝者は 故 野原雅也である。野原は昨年の伊東温泉記念を勝ち、3月の名古屋でのF1戦が最後のレースとなっているが、その最後のレースでは和田健太郎を牽制し共に落車。野原は失格となっているのだ。
そんな和田健太郎が今回伊東温泉記念で優勝を飾り、アンバサダーを務めた野原の奥様である野原美咲さんから花束を贈呈された。何かの縁があったとしか思えないこの巡り合わせ…競輪ファンは熱く込み上げてくるものがあったに違いない。