弥彦競輪場のある新潟県ではもう冬を感じさせるような寒さな上に、初日こそ晴れていたが2日目と3日目には選手の体力とパフォーマンス大幅に低下させるような大雨の中で行われた第32回 寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント。名の通りトラック競技を主戦とし世界選手権で活躍した選手を選抜するG1でもあるためナショナル3選手に注目してみた。
初日
6R 窪木一茂
イン切りから位置どりこそ3番手確保、それも和田健太郎の後ろを確保したものの最終に小倉竜一の中わりで内につつまれ8着。やはりトラックにはないヨコという技術に苦汁を飲まされた形になってしまった。窪木の初G1はあっけなく初日に終わりを迎えた。やはりG1、相手も一流である。主戦を中長距離に置く窪木にとっては荷が重かった。
8R 太田海也
圧倒的勝利。主導権をとりそのまま別線に何もさせず1着。圧倒的な脚の違いを見せつけての勝利であった。
11R 中野慎詞
渡邉一成との連携を外すものの内へ行くなど位置取りの工夫と選考優位に助けられ4着で二次予選Aへとコマを進めた。
このレースではベテラン2人の復活の兆しが見えた。平原と成田だ。平原はレース後のコメントで脚の痺れがなくなったとコメントを残していた。成田はレース後のコメントが見つからなかったがレースを見る限り、大丈夫そうだ。
理事長杯
SS3車ラインとSS3人が単騎というSSの競輪対KEIRINのような番組になった。古性の鮮やかな捲りが決まった。
2日目二次予選
9R 中野慎詞
打鐘前から先頭に立ち、主導権を取るもナショナルの寺崎が強烈な捲りでなんと2着。中野は5着に沈んだ。寺崎はナショナル勢で唯一準決勝勝ち上がりを見せた。
10R 太田海也
太田も中野同様、主導権を取り先行したが、三谷の強烈な捲りに沈んだ。この時の三谷の捲りには敵わないだろう。それほど強烈であった。
ローズカップ
理事長杯に続き、ローズカップも制した古性優作。眞杉のつっぱりを読み、終始3番手確保から内を掬い、あの平原を楽に(見える)跳ね退け、眞杉をかわし、山田久徳とワンツー決着。心なしか身体もいつになく絞れている様子だった。
日本の競輪のレベルの高さ
中野、太田ともに主導権をとり、前々の競輪をしたが弥彦の長い直線が仇となった。250バンク主戦の2人には果てしなく長く感じたのではないだろうか…
二次予選敗退となった中野は今年、ケイリンで世界で3位になっているのだ。競輪とケイリンは違う。とよく言われているし、比べるのはナンセンスなのは百も承知だが、今回は競輪をもじり派生してできたのがケイリンであるということをふまえてあえて言わせてもらうと、そのケイリンで世界3位の中野ですら簡単に勝ち上がれないという日本の競輪のレベルの高さは凄まじいものである。それも二次予選だ。間違いなく競輪は世界一のレースが繰り広げられているということだ。
私は日本を背負い、日本の競輪を代表して競輪の強さを世界に見せつけているナショナル勢をリスペクトし応援している。しかし彼らがこうやって国内の競輪で苦戦しているのを見るのも嫌いではない。負けた選手には申し訳ないが日本の競輪のレベルの高さ、素晴らしさが際立つからだ。
準決勝
注目していたナショナル勢少なくとも1人、いや2人は準決勝までは勝ち上がれると思っていた…しかしG1は甘くはなく二次予選で全員敗退となった中、準決勝のメンバーの中に元ナショナルで世界選手権ケイリンで2位を獲っている選手がいた。
河端朋之である。しかもその河端が準決勝単騎でみせる。終盤最後方に置かれたが、最終3コーナーから捲り上げ、長い直線を活かし、大外強襲。3着に入りなんと河端が決勝勝ち上がりを見せたのだ。
諸橋の主張
河端は決勝で犬伏の番手という位置絶好と、思いきや…?番手は諸橋という珍事が発生した。
なんと諸橋が犬伏の番手を主張して、それを受け河端は単騎選択をしたというではないか。これはどうなんだろうか。
競輪にはラインという素晴らしい文化がある。これを壊すような言動だったように思える。地元のG1だから勝ちたいのはわかるが、勝ちたいのは全員一緒だ。
犬伏も同地区の選手がいないのであればこれは利害が一致しているのでわかるが今回は同地区の河端がいるのに諸橋の言動はあまりのも勝手すぎるのではないか。これが許されるのであれば、みんな自由に主張し、自分の走りたい人の前や後ろを選べることになって地区の概念までなくなってしまう。
競輪には番手を取り合う競りというのがあるが、河端はヨコがうまくないのと、諸橋と競っても勝ち目はない。と判断したのかもしれないし、犬伏の後ろについても追走が怪しい河端には単騎のがあっていたのかもしれない。
とはいえG1では特に同地区の仲間の勝ち上がりを考えてレースをしたり、いかに仲間と一緒に勝ち上がるかを考えているはずなのに、決勝でこの言動には正直驚いた。
決勝
元世界2位の実力はダテじゃない。G1初制覇 河端。という筋書きのドラマを期待していたが、さすが日本の競輪。そこも甘くはなかった。
それでも全く見せ場がなかった訳ではなかった。準決勝同様終盤まで最後方で勝負期を虎視眈々と狙いすまし、バックから3コーナーにかけ加速、この時の加速は素晴らしく一瞬あるかも⁉︎そんな期待を持たせてくれるような加速であった。2センターあたりで落車の煽りを受け外に膨らんでしまい、結果6着だった。優勝は今年3つ目のG1タイトルとなった古性優作。
古性本人はインタビューなどでは「たまたま」とよくいうが、本当にレースの展開を全て知っているんじゃないかと思わせるほど完璧な読みだった。犬伏が仕掛けてくるタイミングとそれに合わせる小松崎、合わされた犬伏が失速するかタイミング全てを知っていたかのような2コーナー終わりからの捲りは完璧に決まり、後続を寄せ付けない強い勝ち方であった。
古性優作の偉業
寛仁親王牌完全優勝
同大会での完全優勝は96年の神山雄一郎以来27年ぶり史上2人目の偉業である。
G1同一年3勝からの史上初記録へ
さらにG1を同一年で3勝したのは97年の神山雄一郎以来26年ぶり史上6人目の偉業でもある。さらにG1を同一年4勝すると史上初の記録になり、競輪祭が残っているのでリーチというわけである。
グランドスラム
史上5人目となるグランドスラムへのカウントダウンとなるか。本人も宣言しているグランドスラムへは残り全日本選手権と競輪祭の2つである。グランプリも含めたグランドスラムとなると史上3人目となる。気が早いが、古性なら十分達成できるだろう。
そのくらい強い。
獲得賞金
現時点で2億円を突破し、昨年脇本雄太が達成した3億円どころか、史上最高獲得賞金の達成の可能性も出てきた。残るビッグは競輪祭とGP。
寛仁親王牌後の賞金ランキング
1位 古性優作 2億1638万
2位 山口拳矢 1億3146万
3位 佐藤慎太郎 1億2526万
4位 眞杉匠 1億707万
5位 松浦悠士 9319万
6位 清水裕友 8315万
7位 脇本雄太 8059万
8位 深谷知広 7966万
9位 新山響平 7682万
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10位 犬伏湧也 6338万
11位 郡司浩平 6166万
12位 守澤太志 5914万
13位 新田祐大 5879万
14位 山田庸平 5591万
15位 三谷竜生 5541万
古性のせいか、おかげか。賞金争いはさらに激化⁉︎
古性優作が今年のG1の枠を3つ獲ったことによりタイトルホルダーとしてグランプリへ出場するのが3人、競輪祭の優勝者次第では4人ということになり、残りの5人が賞金での出場となり、さらに熾烈になった。
さらに今年のタイトルホルダーが競輪祭を勝つようなことがあればG3の結果や競輪祭の予選での賞金差で順位が変動するくらい熾烈になっている。もちろんG3の結果からもますます目が離せなくなり、競輪の楽しさが増しています。
そんな次回のG3は10月28日から京王閣ナイターで、賞金ランキング上位からは佐藤慎太郎、新田祐大、眞杉匠、山田庸平が出場予定です。