今年初レースであるS級S班2人。
新山響平と山口拳矢である。共に前開催を欠場し、なんと今年初レースである。
これでケガの眞杉を除くS班達の2024年が始まった。
初日特選
毎回のことだが、とてつもないメンバーが揃った。
新山が新田佐藤を含む3人を背負う4車ラインに近畿の最強コンビの2人、九州からは成長目覚ましい嘉永に、暮れの広島記念を制し、上り調子の山田庸平。代名詞になりつつある単騎の山口拳矢だ。
レースは新山が得意のつっぱり先行から地元福島勢が支配するかと思いきや、なんと脇本が最終バックあたりから久々の”らしい”捲りでなんと北日本4人を丸呑み。番手の古性ですら差せないほどのスピードを見せ見事勝利。
大宮記念では体調不良(喘息)で途中欠場もあったが、このまま何事もなくいけば脇本の完全復活も近いと思わせるレース内容であった。近畿地区はもちろん、ファンも待ち望んだ復活である。ますます近畿無双の年になるのか…
勝利後に脇本は今年変化を求めていくとのコメント。前後というよりは位置どりなどを踏まえたレースをしていくようなコメントにもとれた。このレースも中団にこだわっていたという感じでもなかったが、いつものように7、8番手まで下げるというような感じでもなかった。今後の脇本のレースに注目である。
問題発言?
レース後5着の嘉永のコメントがすごく引っかかった。
GP覇者3名、グランドスラマー、同一年G1 3勝のタイトルホルダー総勢6名というメンバー相手に6番車の”油断”というこの堂々たるコメントは正直驚いた…
ノンタイトルの6番車でどういう考えからこのメンバー相手に油断できるのか。掘り下げて聞いてみたい。
その後、嘉永はしっかりと決勝にまで残ったが、決勝前日のコメントでも周囲を騒がせたのだった。
冬の暴風は配当大荒れ
先日の和歌山記念でも暴風吹き荒れ、配当が荒れに荒れたのは記憶に新しい。今節のいわき平では初日から最終日まで荒れに荒れた。1000倍越えの配当はシリーズ通して48レース中なんと8レースも出ていた。
10万車券が5本 20万車券が2本 30万車券は1本 最高配当は37万車券であった。
やはり自転車競技に及ぼす風の影響を改めて感じたシリーズであった。
本命が次々と敗退
SSや本命の敗退が目立った開催でもあった。
山口拳矢
準決勝敗退。
S級S班として初陣となった今開催、インフルエンザ明けという情報もあったが、昨年の秋ごろから動きは良くない…現状SSの中で1番心配である。地区としても山口拳矢を援護できるような番手や、自力の選手も少ないのも懸念店である。何か活路を見いだしてほしいものだ。最終日こそ1着あったものの本来の動きから程遠いものであった…
脇本雄太
二次予選落車。
初日特選であれだけの捲りを見せ、完全復活か?と期待され二次予選は圧倒的な人気に支持されるも落車棄権となった。
中団へのこだわりか?内側に切り込みすぎて前走車とハスり落車してしまった。
ハスる。ハウスする。
自転車競技で選手同士の前輪と後輪がぶつかること
復調気味であっただけに非常にもったいない落車となってしまった。脚力は誰もが認めるワールドクラスの脚力なので、脚力だけでなくスキルも重要なのだと気付かされる。競輪に落車は付きものであるが、落車しないということは=ケガをしないこと。である。古性を毎回引き合いに出してしまうが、転ばないことも強さの一つである。
古性優作
なんと絶対王者・古性が準決勝で敗退するというこのシリーズで1番の波乱と言っても良い波乱が起きた。
準決勝はラインの先頭で近畿は2車、対4対3の3分戦という数的不利な中、後方に置かれまいと中団確保し5番手から仕掛け、4車ラインの番手からでた山田庸平をもねじ伏せた。しかし末が甘くなり4着に沈んだ。古性の番手から抜け出し1着の神田は「内を締めて入れば…」と技術不足と反省を口にしていた。
近畿無双とは簡単にいかない
近畿はSSを2人とも決勝には勝ち上がれず散ってしまう結果となった。
和歌山記念での強さ、初日特選の強さを見ても磐石と思ったが、さまざまな要素が絡み、簡単に勝てないのが競輪である。
決勝
決勝は初日特選メンバーと比べ4人が入れ替わった。
近畿はSS2人が神田と窓場に代わり、九州は井上昌己と伊藤旭が決勝に乗り、九州はなんと4人が決勝を走ることに。しかしこれが九州、いや熊本に亀裂を生むような結末になってしまった。
九州4車結束と思われたが…
前日から九州4人がどう並ぶかは注目されていた、新山のつっぱり先行率いる地元3車に対抗するには、伊藤から嘉永 山田 井上で並べばかなり強力で地元ラインからしても非常に戦いにくいからだ。
ところが発表された並びは九州は別、熊本と分かれることになった。
個人的にこれ自体はとても良い判断と思った。4人並べばおそらく井上が4番手、となると井上の勝機は薄くなる。昨年末、地元記念でありながら4番手を回ったことが今でもとても切なく感じてしまっていたからだ。
嘉永の発言に賛否
実際は九州というより熊本の間にはそういう事情ではなかったようだ。嘉永が伊藤の前回りに難色を示したというのだ。
「旭とは高校の後輩で練習仲間。普段からレース内容を指摘している。強いが仕掛けるべきところで仕掛けられていないし、改善もされない。同じ自力選手として、前を任せられる選手ではないので、調子も良いし、自分が前。(伊藤のレース内容が良くなったら)その時はまた前後を変えて頑張れればいいなと思います」
伊藤
「泰斗さんに前を志願したけど却下された。先頭で頑張るつもりだったんですが…。自分の競走スタイルと、日ごろの行いが悪い自分のせいなんですけど、(任せてもらえず)やっぱり悔しいです…。先頭以外なら自分は4番手とも思ったんですが(山田庸平、井上昌己と)相談して泰斗さんの番手になりました。悔しいけどチャンスだと思って、後ろで勉強させてもらいます」
ということであった。これには賛否あるだろう。
伊藤は荒井崇博とも因縁というか不仲なのは有名であるし、走りに納得がいかないという人も確かにいる。
とはいえ嘉永も嘉永だと思う。走りはもちろん、初日特選後のコメントも含め、言動が手本になっているか?というとそうでもないと感じるし、言える立場ではないと思う。
しかし、これだけ言ったので決勝は闘志むき出しで北日本に向かってくるだろうと。
旭よ。いいか、後ろでよく見とけ。と言わんばかりの走りを予想した人も多くいたのではないか…
嘉永1着の三連単で9番人気。伊藤1着の三連単は40番人気であった。嘉永は地元で新山の番手新田の次に人気していた。
北日本の予想外の戦略
鼻息荒くイレこんだ嘉永をサラリと交わすかのような北日本の初手はなんと後ろ攻め。
新田はスタートも速いし、1番車だったので北日本は前受けからのツッパリと思っていた人が多くいたのではないだろうか。
実際、嘉永も初手で北日本が後ろ攻めになったのは意外だった。とコメントを残している。
この北日本の作戦はぴったりハマった。ホームで新山上昇、打鐘ガマシから主導権を握った。
新山の成長
新山先行 番手新田で思い出すのは、およそ1年前の22年のGPだ。新山が初めて赤パンを履いて臨んだGPで松浦に番手でせられて北日本が崩壊した。あのグランプリである。あからさまに動揺した新山から、この落ち着き払った打鐘ガマシを見ると驚くべき成長速度でありSSの風格すら匂わせる。先行でタイトル獲得が楽しみである。
山田庸平は4番手から捲りにでたが、これにうまく合わせて出た新田が見事優勝となった。
レース後、北日本はつっぱりだと2個のラインがサラ足で飛んでくる。今後を見据えてバリエーションを増やすのも良いこと。というコメントを残した。
もしかすると、今後コマ切れ戦では後ろから攻めることも示唆しているのだろうか。
これは予想する側も難しくなるが、もちろん対戦する側も難しくなるだろう。
熊本に亀裂はないのか…
北日本の(3番手佐藤慎太郎は確定版に入れなかったものの)見事な作戦勝ちで地元記念優勝で幕を閉じた。
一方、熊本の2人はどうだったのか。
初手で3番手を取ったものの青板での仕掛けが中途半端で新山に叩かれ8番手に置かれる。赤板で仕掛けるも先頭は新山が打鐘から仕掛けていて8番手捲りはさすがに厳しい。車が全く出ない…6番手併走が限界。2コーナーすぎに伊藤に切り替えられる始末…
伊藤はその後、強引に位置取りし5着まで巻き返した。嘉永は8着でレースを終えた…
決勝レース前から悔しい。という言葉を発した伊藤旭はどんな気持ちでこのレースを終えたのだろうか?
仕掛けるべきところで仕掛けられていない。
同じ自力選手として前を任せられない。
と言って臨んだ嘉永はレース後、
「ホームで仕掛けたけど前がかかっていた。行けなかったのは足(脚力)がないだけ。伊藤旭は自分とはレーススタイルが似ているので、普段から厳しめに言っているところはある」とし、「下もどんどん出てきている。年も近いし、先輩後輩ではなく、その時の調子で前後を選んでもいい。(伊藤に)行かせるだけなら簡単なので」
と言ったそうだ。
伊藤への奮起を促す意味での前回りだったことを強調したかったのだろうが、後付け感は否めないし、はっきり言って今回に限っていえば口だけの選手になってしまった。
熊本記念では一丸となり良い勝利を挙げていたし、熊本競輪場の再開もあり、嘉永には期待していただけに、今回の初日特選後の発言から決勝レースまでの流れを見ると非常に残念。
しかし彼はまだ若い。失敗もたくさんする中で成長していくだろう。レースで見返してほしい。
まだまだ期待はやめない。