自転車競技トラック日本代表の2024の初戦はここから始まる。
今年はパリオリンピックが控えているため、出場枠を争うという面においても重要な大会になっている。
UCIネーションズカップは年に3戦実施され世界選手権、オリンピックに次ぐ高いUCIポイントが獲得できるということもあり、世界中から強敵が参加する大会である。
※2020年まではワールドカップという名称で大会が行われていたが、2021年からワールドカップの後継としてできた大会である。
注目は個人スプリントとケイリン
やはり競輪発祥の国、日本。として注目すべきは男女ともに個人スプリントとケイリンである。
2023ケイリン世界選手権を3位となった中野慎詞。
2023ヤンググランプリは制した太田海也。
2023ガールズグランプリを制した佐藤水菜と23年を沸かした日本が誇る3人である。
女子スプリント
全日程3日間で行われる今大会。女子スプリントは大会二日目。
スプリント予選は200m TTで行われた。
予選の結果は世界王者のエマ・フィヌケインを筆頭に早々たるメンバーが上位に名前を連ねた。そんな中、佐藤のタイムは10.614で8位という好位で予選を通過。
1/16ではアジア大会で戦った中国のユアンリン選手を下し、順調にベスト8へ。
女王フィヌケイン激突
1/8ではなんと世界女王エマ・フィヌケインと激突…
昨年の8月に行われた世界選手権では敗れている相手でもある。昨年から月日は経ち、佐藤は強くなって世界戦に戻ってきていた。
なんと世界女王フィヌケインを相手にストレート勝ちを収めた。
全日本チャンピオンジャージをきた佐藤がアルカンシェルのフィヌケインを負かしたのだ。このシーンは中継がなかったものの、日本の(佐藤水菜の)世界一がかなり近づいた瞬間である。
ここでフィヌケインに勝利したら突き抜けると思っていた。金メダルは濃厚と思った…
決勝の相手も元世界王者
準決勝はアンドリュースと対戦も1本目でアクシデントがあり、アンドリュースが落車棄権となり、不戦勝。
決勝へと駒を進めた佐藤は決勝で2020年の世界王者エマ・ヒンツェと対戦することに。次から次に世界王者が出てくるこの激闘。しかしこれは佐藤が世界のトップで戦っている証明でもあり、世界の上位の1人であることの証明でもある。
1本目
佐藤は内側。スタート前の表情からもとても余裕を感じる。
半周でヒンツェに先行させ、追走。3コーナーから併走し最後の直線で差す。という冷静さと力を掛け合わせたような勝ち方で先取。金メダルへ王手。さらにこの勝ち方は次のスタートが外側から始まることを考えてもヒンツェにプレッシャーをかける勝ちとなった。
2本目
もちろんヒンツェとしては1本目に交わされているので先行したくない。牽制が入りながらも佐藤は冷静に前にでることはせず、残り1周というところでヒンツェが意を決して先行。そのまま押し切られてしまった。
さすがは元世界王者、1本目から仕掛け位置をしっかり修正し、2本目を取り返した。
こうなると形成逆転、一転して佐藤が厳しい状況に。
3本目
ヒンツェは後方から仕掛けると思いきや、残り2周でなんと佐藤の前に出てそのまま先行して押し切られてしまった…
意表をつかれたわけではないだろうが、見ている側としては予想外であった。
攻めの気持ち
このヒンツェの仕掛けは、まさに今年、佐藤がテーマにしている”攻めの気持ち”そのものであった。
世界女王をストレートで下して決勝まできている佐藤に決して攻めの気持ちがなかったか?というと、そうは思わない。ヒンツェの攻めの気持ちが佐藤を上回っていたのかもしれない…
2023年の世界選手権で佐藤が感じた世界との差を埋めるべくテーマにした”攻めの気持ち”はこのヒンツェを見るととてもよくわかった。
そして、世界のトップで戦っている選手たちは臆することなく攻めるのだ。それも強さ要素なのだろう。それがよくわかるレースであった。
約半年前にそれに気付き、取り組みさらに2024の初戦で2位という結果を残している佐藤にはやはり期待しかないだろう。さらに夏に行われるオリンピックと秋の世界選手権では今大会のヒンツェを上回る攻めの気持ちで戦ってくれるだろう。
男子ケイリン
太田と中野の最大のライバルである短距離界の絶対的王者ハリーラブレイセンが不在の中行われた。
それでも2023ケイリン世界選手権1位2位のキンテロとリチャードソンが参戦した。
勝ち上がり まさかの世界王者敗退
今大会は1回戦は1着のみ勝ち上がりその他は敗者復活戦へ回される。
その後、準決勝、決勝という流れである。
注目の太田の中野は共に1回戦で1着をとり、準決勝へと駒を進めた。
なんと敗者復活戦で2023世界王者であるキンテロが勝ちあがれず敗退となった。キンテロと同組になった日本の山崎が先着し準決勝へと勝ち上がった。
準決勝
中野と太田は同組で激突するも1着、3着と危なげなく決勝へと進んだ。
ケイリン発祥の国として世界制覇を期待している身としては勝手にケイリンでは決勝進出はおろか表彰台は最低ラインだとしている。ましてや今大会に限って言えばラブレイセンとキンテロがいないわけなのでなおさらだ。
一方でもう一つの組では2023世界選手権2位のリチャードソンとアジアで何度も対戦があり、日本勢はよく苦しめられたマレーシアのアワンと日本の山崎が対戦した。
リチャードソンは圧倒的差をつけ、1着。2、3着争いは山崎を含むアジア勢3人の争いとなったがアワンに交わされ山崎は惜しくも4着で敗退が決まった。
決勝
決勝メンバーを見るとラブレイセンにキンテロがいないものの見劣りしないメンバーが揃った。
アワン、中野、太田、リチャードソン、カーリン、チェンシー
※一つの国から2人決勝に乗るのは誇らしい。
なんならライン組んで圧倒的勝利をあげてほしいくらいだ。
左から内枠なので枠も悪くない。内から4人で決まるだろう。そんな気がしていたし、ワンツーの可能性も十分あると思っていた。
ペーサー退避直後からレースは動いた。
日本勢の番手にいた4番手のリチャードソンが位置を上げてくるだろうと警戒。内が開いたスキに5番手のカーリンにウチをすくわれた。リチャードソンも外から位置を上げる。日本勢は4.5番手にされるという展開…それでも2人は冷静だった。
残り1周半(つまり打鐘あたり)でアワンが仕掛ける。その仕掛けに反応したのが日本の2人。うまくリチャードソンとカーリンを内に包んだ。
最終ストレートで先頭を走るアワンに迫ったのは中野。しかし僅かに届かず…
アジア選手権で苦しめられたアワンにここでもやられてしまった…
それでもリチャードソンより先着し、日本勢としては表彰台に2人上がったということはとても素晴らしい結果である。同時にパリオリンピックと世界選手権において視界良好といったところだ。
山崎賢人も注目
惜しくも決勝には上がれなかったものの、優勝したアワンと準決勝で接戦を繰り広げた山崎賢人にも今後は注目だ。
競輪とケイリン
日本発祥の競技である競輪から世界基準の自転車競技に入ったわけだが、ルールなど似て非なるものであるのはご存じの通り。
400バンク、ヨコ有りで、国や大陸別でラインを組んで走ったら面白いだろうな。日本は敵なしだろうな。なんて妄想は膨らむものの。
競輪は競輪で日本にしかないからこそ価値があるのかも知れない。
そして、競輪はケイリンというインターナショナルルールのもとであっても揺るがない強さを示すのである。
これぞ、競輪のチカラだ。