今年から新設されたガールズケイリンG1の一つ。最も格式の高い位置付けであるオールガールズクラシックが松戸競輪場で行われた。
松戸開催ならでは見どころ
前回G1パールカップとの大きな違いの一つとしてナショナル勢の参戦である。観客も選手も国内組VSナショナル勢の構図は少なからずあったはずだ。そしてその戦いをさらに激化、面白くさせたのは松戸である。
松戸の大きな特徴といえば33バンクだろう。33バンクはカントがキツいと国内では言われているが、世界戦の250バンクからするとカントがないのだろう。初日の佐藤水菜のインタビューではカントがなくてふらついたとあった。2日目の太田りゆも2センターあたりでふらつきが見えた。普段250バンク主戦のナショナル組と400バンク主戦の国内組の決戦を33バンクでやるのは非常に見応えがあった。
松戸の特徴はG1戦線だけでなく他のA,B,Cグループのそれぞれのガールズケイリンでも自ら仕掛け勝利を掴みに行く走りを引き出していた。
強すぎる佐藤水菜
連日、世界クラスの素晴らしいスピードで圧倒的力差を見せつけ優勝を果たした。
初日は誘導退避からカマシて他を寄せ付けず勝利。
2日目は捲りに合わされ4車並走となり、一番外を回される展開に見ている方はヒヤッとしたが、本人は想定内だし「ケイリンでもよくあること。慣れている。」とケロっとしていた。映像をみてみると、確かに最後の直線で横を見る余裕すらある…2日目も圧勝といって良いだろう。
最終日、大雨の中行われた決勝も後方からのレースとなった。松戸の33バンクでメンバーも揃いに揃ったトップクラスの自力型メンバー相手に大雨33バンクでの捲りはさすがの佐藤水菜でも厳しい。打鐘からカマシか?と思った矢先、児玉が打鐘前から上昇、それもかなりのスピード。捲りに転じるしかない中で冷静にタイミングを見計らい、とてつもないスピードで捲り、2着に3車身も差をつける圧勝。まさに異次元。おまけにゴール戦を切ってすぐにVサインの余裕まで。どこまで強いのか。強すぎる。
ガールズケイリン国内組のレベル
児玉碧衣がよくナショナル勢には負けたくない。というコメントを残しているがナショナル勢が特別強いというわけではない。実力があるのは間違いないが、トラック競技として素質や適性をみられガールズケイリン選手からナショナル組に引き抜かれ日本代表として戦うわけなのだ。中にはナショナルの誘いを断って国内のガールズケイリンを走っている選手もいる。
結果として梅川風子は準決勝敗退、太田りゆは決勝7着という結果に終わっている。ナショナルの敗因を上げればキリがないので控えるとし、今回は日本の自転車のレベル、ひいてはガールズケイリン自体のレベルが高いという証明にもなった。
そして何より佐藤水菜が特別に強いということでもある。佐藤水菜本人もナショナル勢というよりはガールズケイリン選手の1人として見てほしい。と答えていた。
個人的には世界に勝っているパワーとスピードを兼ね備えている佐藤水菜として見ている。
ガールズケイリンのおもしろさ
G1が新設された時もこのオールガールズクラシックが始まる前も批判は各所で起こっていたが、ガールズ競輪が色々言われているのは今に始まった事ではない。
”ラインがないからつまらない”
”縦脚だけの勝負”
”実力がわからない”
”レースが単調でつまらない”
”ガールズだけ買わない”
と言ってきた人からすると1~12R全てガールズのオールガールズはそりゃつまらないだろうな。と思う。
…A級やチャレンジも大して変わらんぞ。A級チャレンジだけ買わないって人もいるだろう、それは
”ラインがあってないようなもの時がある”
”縦脚だけの勝負の時がある”
”実力がわからない”
”レースが単調のときがある”
時がある。としたのはそうではない時もあるからだ。逆にそうではない時がある分、ガールズよりタチ悪く、余計わからないのではないか?と思う。
いや、A級チャレンジを引き合いに出して悪く言いたいのではない。
ラインがない面白さもある。
縦脚だけの面白さもある。
実力だって選手を追えばわかってくる。つまりどちらも何事もよく調べたり研究したりしておもしろさが出てくるのだ。競輪を見始めた最初は誰だってわからなかったはずだ。
逸れたが、ガールズケイリンは歴史がまだ浅くこれから発展を遂げていく、いわば進化中である。競輪には進化、発展する力がある。今は一緒にガールズケイリンの歴史を作っていける素晴らしい時代ということなのだ。
佐藤水菜も初代女王として歴史に名が残ることを喜んでいた。これを風化させないためには我々観客にもできることがある。
ガールズケイリンの今後
平日のナイター3日制開催だったが当初の売上目標の25億を大幅に上回る30億を叩き出した‼︎これまでのガールズはビッグレースも男子の競輪の間で行われていて、ガールズの人気がどこまであるのか不透明な部分はあったが、今回の売り上げはガールズだけで見事に売り上げ、ガールズ人気を証明した大会になった。
賞金700万は妥当?
オールスター競輪直前、京王閣と和歌山で行われた大阪関西万博協賛のG3の売り上げが4日間で34億と37億。優勝賞金が420万と400万ということを考えると今回のオールガールズクラシックの700万は妥当なのかもしれない。
大成功で終わらしてはならない
主催も選手も本当に頑張っていて面白い開催になった。しかし本当に試されるのはここからである。第一回大会というのは皆、興味本位でみたり買ったりするが、2回目以降は意外とあっさり飽きて見なくなったりもする。いかに継続することが大事なのか。主催側でできること、競輪場としてもまだまだできることはあるだろう。
次回オールガールズクラシックは24年4月久留米競輪場だ。