ネーションズカップの裏(いや、ネーションズカップが裏になるのか?)で行われた静岡記念。
今年からS級S班となった深谷の地元記念となる。
先日行われた同地区の川崎記念では、SSどころかGPチャンピオンまでも差し置いてSS不在の12Rを走ったり、5車結束してS班の深谷まで死に駆けしてまで勝ち取った郡司がこの静岡記念では深谷に返すべき時がきたのか?前のレースのお返し。なんてことも競輪の良いところでもある。
いやしかし川崎ほど露骨にやるとさすがに茶番のような気もしてくる。さすがに静岡は川崎のようなレースにはしないだろうという心配をよそにあの男がやってくれた。
初日特選
川崎と違い松井宏佑–深谷–郡司の並びとなった。初日特選は、川崎より強力な並びとなった。
対するはSSの即席ラインの清水裕友–佐藤慎太郎ラインだったが、南関3車ライン前受けからつっぱり死に駆け先行で番手まくりの深谷に敵うものはいなかった。郡司もしっかり2着に入った。
今年に入り、大宮記念は獲ってはいるものの、大宮記念の埼玉勢5車結束、川崎記念の5車結束を目の当たりにしてきた清水裕友はこの開催をどう見ていたのか。
準決勝
二次予選は初日特選組の浅井が落車となり敗退となった。ということ以外は大きな波乱なく順当に勝ち上がったと言えるだろう。
注目は寺崎浩平
今年からナショナルチームを離れ、競輪一本で活動を宣言している寺崎浩平が見せた。前走の和歌山記念記念から頭角を表していたが、ここではSS佐藤慎太郎率いる福島3車を1人で敗退に追い込んだ。地元静岡勢と東北勢のやりあいを冷静に後ろから捲った。
清水裕友の恐ろしさ
なんとSSの清水裕友は準決勝で単騎にさせられたしまったのだ…(いや、番組屋は伊藤颯馬とラインを組むと思ったか…)南関地区また…と思った。
赤板すぎに切りにでた清水。打鐘では南関勢の抑え返しにあったその時、車体故障か?と思うほどの後退、ズルズルと9番手に下がった。しかし単騎であったというのもあり、冷静に下げただけであった。1センターから捲り。3コーナーでは先頭に2車身をつける圧巻のレースであった。
南関勢勝ち上がりに苦しむ
準決勝10R11Rで南関勢1人も勝ち上がれず…10Rも11Rも南関勢は3車ラインだった。それも10Rは静岡期待の渡邉雄太、11Rは初日特選組の松井宏佑の敗退だ。
南関贔屓であるならば昨年の共同通信社杯の時のように渡邉と深谷で決勝を戦って欲しかったと思っているファンも多かったのではないだろうか。
12Rではしっかり深谷と郡司、3番手の佐藤壮まで勝ち上がりを決めたが、南関贔屓にみても準決勝の番組が少しアンバランスだったように思えた。いや、番組屋が寺崎と清水の力を侮った可能性も否めない。
決勝
南関勢からすれば、思わぬ準決勝だったのだろう。本命の深谷とウマになりきれるのか不安な郡司は決勝に勝ち上がった。
ウマという表現はあまり好ましくはないが、あえて使わせてもらう。しかもそのウマに郡司はなれるのかすら不安がある。
なぜなら昨年の静岡記念、渡邉雄太の死に駆けから番手の深谷発進も3番手の郡司が差したからである。
いやもちろん。全員が1着を狙うのが当たり前で、わざと負けるようなことがあってはならないから良いのだが…
今回、駆けることに一瞬でも躊躇したら寺崎も、清水も飛んでくるだろう。
となると自分(郡司)はおろか深谷の優勝まで厳しくなる。深谷はSSになっても郡司のために本当の死に駆けをたくさんしてきている。ここで返さなければいつ返すのか。
清水は大宮記念で埼玉5車を1人で潰しているし、川崎記念でも郡司は優勝したものの2、3着は中国地区2人であり、間違いなく南関を苦しめたのは清水である。
レースは南関勢前受け、赤板では寺崎、小林泰正が叩きにくるもつっぱり。
その隙に清水はうちをすくって4番手確保。郡司は打鐘から死に駆け開始。しかし3車の死に駆けはラインが短い分不利である。しかも4番手には清水…
バックすぎに清水が仕掛ける、合わせて深谷も出る。清水はコーナーで外を回される分不利、半車輪ほど深谷が前に出るも…最後の直線清水に差されてしまった。
南関はなぜ
郡司は駆けてくれた。深谷のために。これは無念…としか。
清水がシリーズを通して別格の強さであったのは間違いない。その上で南関の敗因を考えるのであれば、深谷の車間あけは不必要であったような気がしてならない。元々郡司を残す必要がないのにあれだけの車間を開けるのは必要か?車間を開けて後方から捲ってくる選手に合わせる必要もあるのだろうけど、車間を開ければ風邪を受けるため脚も使う。それに郡司は言葉通り、死に駆けなのだ。捲ってくる選手は郡司のスピード以上を出さなければならないわけで郡司がタレるまでは郡司の番手で温存しておくべきだったのではと。
しかしこれもまた深谷という素晴らしい人間模様を描いているのかもしれない。競輪は面白い。
皮肉にも郡司はもう一度深谷のために駆ける理由ができた。それでもお釣りが来るくらいだと思う。