年末の大一番KEIRINグランプリ。優勝賞金1億円以上という金額の大きさや、その年のG1勝者と賞金上位者、9名ベストナインの戦いから競輪界最高峰のレースと言われています。
競輪界にとどまらず、全世界にたくさんある自転車競技の中で世界一賞金が高いのが、KEIRINグランプリなのです。参考までにあのツールドフランスで個人総合優勝者で約5000万円程度。実はここにも競輪の良さがたくさん詰まっているのです。話すと長くなるのでまた別の機会に…
〇〇決定戦?きっかけ?お祭りレース?
勝者にはグランプリレーサーの冠がつきますし、大きな賭け金が動くこともあり、ここに賭けているという選手やファンも多い。
個人的には賞金王や最速を決定するという見方というよりはお祭りレースという感覚が強い。
純粋に競輪という競技を楽しむにはこの一発勝負というレース方式は面白味に欠ける。競輪の最速や最強を決定するにはラインという存在を無視できないし、個人やラインの勝ち上がり、並びなどの複雑な要素をたくさん含んでいるし、それが競輪の面白さだからだ。
とはいえ初めてみる人やきっかけとしてKEIRINグランプリは重要な役割を果たしているし、その年の最後に行われるので、一年間の戦いが予選という見方もあるでしょう。
さまざまな楽しみ方ができるのがKEIRINグランプリ。
ヤンググランプリ
グランプリシリーズ第一戦はヤンググランプリ。
ヤンググランプリは開催当年、前年、前々年と3期にデビューした選手で競争得点上位者が出走する。賞金は470万円でレースグレードとしてはG2扱いである。
注目は記念や特別戦線でも大活躍の北井佑季や犬伏湧也。ナショナル勢から太田海也と中野慎詞の4人。普段自力でやっている選手やナショナル勢が多く選出されるので力と力の戦いになりやすく、インターナショナルルールのケイリンに近いレースになることが多い。
普段ラインを背負って先行レースする選手は単騎としては迷いが出る可能性があり、一方でナショナル勢はラインを背負うことが多くないので中野か犬伏に展開が向くかと思ったが、中野は早めに前にでたのが仇となり、内に包まれてしまった。
赤板からは犬伏と太田海也のマッチレースとなった。太田は約1周外を回されたにも関わらず、太田海也が犬伏を叩きそのまま勝ち切るレースとなった。
G1優出3回を誇る犬伏はケタ違いのフィジカルでここまでやってきたと言っても過言ではないだろう。その犬伏を力でねじ伏せた太田の強さもまたフィジカルであった。
犬伏はレース後のコメントで脚余してしまった。といっていたが見てる限りはそうは見えなかった…いや内側を走って叩かれて脚を余すとはあってはならないと思う。
むしろ負け惜しみなら安心、本当に脚を余していたなら2024シーズンは心配である…
ガールズグランプリ
グランプリシリーズ第二戦はガールズグランプリ。
ヤングと違い、レースグレードがGPというもののガールズグランプリの賞金は700万円でグランプリと比較すると見劣りするのは否めない。最速や最強の決定戦という位置付けには1番相応しいのがガールズグランプリのような気がする。
競輪祭で物議を醸した敗戦があった佐藤水菜だが、グランプリでも圧倒的1番人気になった。
レースは初手から佐藤水菜を3番手の絶好位置に収まり、そこからレースはほぼ動くことなく佐藤水菜あっさり捲り、グランプリ初制覇となった。
そこからレースはほぼ動くことなく。と表したのは誰が見ても佐藤水菜3番手は勝ち目が低くなるのは明白、初手から3番手に収まっていたので何かしら抵抗はできたのではないだろうか?佐藤水菜が動いてからでは、時すでに遅し。他6人は誰かしら動くだろう。という気持ちが他6人にあったとしか思えない。
たしかにガールズは単騎戦なので動きを見せると不利になりやすいので動きづらいのも事実。誰かが動いてくれ。という気持ちもわかるが、奇しくも競輪祭もグランプリも似たようなメンバーで似たような負け方をしているではないか。
競輪祭ではレース後に「あぁなるだろうな」とコメントした選手がいたがそう思っていたならレース中に何かしら抵抗はできただろう。そう思って何もぜず、誰かが動くのを待って、結果負けて、そのコメントは意味を成さないだろう。なんの為に周回があるのか?このままだとガールズケイリン自体がつまらなくなってしまいかねない。
さらにグランプリやG1などのビッグレースに慣れているのはやはり世界戦を戦っているナショナル勢だろう。G1こそ新設されたものの結果的に国内で戦っている選手はビッグレースでは消極的になり結果的に負けてしまっている。
グランプリ
KEIRINグランプリ。選ばれし9人の戦いである。賞金は言わずもがな賞金1億3700万円。
新山のつっぱり、脇本のカマシ、深谷の捲り、松浦の切り替え、眞杉の末脚とそれぞれの良さがでた、見どころはたくさんあり、グランプリらしいといえばグランプリらしい熱い戦いであった。
新山はSSになり迷い、スランプになった時期もあったが自分の走りを貫き、グランプリでもその走りを魅せてくれた。そのスタイルは現代のスピード競輪の象徴でもある。つっぱり先行というブームを(という表現が正しいかどうかわからないが…)巻き起こした。スピード競輪では一つの成功法になりつつある。無論、脚があることが絶対条件である。
グランプリでも脇本を苦しめたのは間違いない。競輪に限らず勝負事に たら、れば、もし、はないが、もし突っ張っていれば新山の勝利もあったかもしれない。
新山を叩いた脇本はここでかなりの脚を消耗したのはレース結果からもわかる。古性に絶対有利の展開だったが…
深谷はこの新山と脇本のやりあいを想定していたのだろう。新山がつっぱりに成功しても脇本が叩いたとしてもその瞬間から捲ろうと決めていたような捲りであった。
スタートを見ても5番車でありながら北日本の後ろにつけようというのが見て取れるスタートであった。
清水も深谷と同じ考えだったかもしれない。しかし位置が悪く、仕掛けるタイミングも早くなってしまった。そこで深谷に切り替えたのが松浦であった。単騎深谷の番手に入ることに成功。深谷の強烈なスピードに乗り最後は深谷を差し、グランプリ初制覇である。
悲願のグランプリ制覇である。トレーニング以外にも食べ物などに制限し、ケガに苦しみ、戦い抜いた1年。
勝利者インタビューでは男泣きを見せた。この男泣きに感動したファンも多くいたのではないだろうか…
眞杉は車番的に北日本の後ろが想定され、まさに深谷の仕掛けを眞杉がやると思っていた人も多かったのではないだろうか?実際、眞杉は人気になっていた。深谷のスタートが良すぎたため後方からになったが強烈な脚で古性さえも抜く3着。この脚を見れば2024年も活躍間違いなさそうである。
各々思うことはあるだろうが、個人的にSS 9人による一発勝負で最速や最強の決定戦というにはやはり少し無理があるだろう。2023年の最強や最速を決めるとするのであれば、1年間大きく戦線を離脱することもなく、同一年でG1を3勝をした古性優作ではないだろうか。